寒~い冬の夜、オススメの10冊 of 本の新生堂

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雪沼とその周辺

堀江敏幸/著 新潮社 1,470円 
/文庫 380円(共に税込)

雪沼とその周辺.jpg小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。
廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。
Book.pngおすすめコメント

深い岩穴の奥に小石を投げ入れたときの、くぐもった響きが耳に届く。そもそも彼は、古いピンのはじける音が好きで、こんな骨董品みたいな機会に執着しつづけてきたのだった。ー(本文より)                              本書には、月日を経て人から人の手へ渡り、時間と思い出を刻みつけてきた「もの」がいくつも登場します。壊れた「もの」を手直しし、磨き、調子を窺いながら共に歩む。その間にも確実に時は流れ、「もの」は古び、人は老いてゆく。。。
丁寧に生きていくことの尊さに気づくことのできる、オススメの一冊です(*^_^*)

ベルカ、吠えないのか?

古川日出男/著 文芸春秋 1,800円 
/文庫 570円(共に税込)

ベルカ、吠えないのか?.jpg1943年・アリューシャン列島。アッツ島の守備隊が全滅した日本軍は、キスカ島からの全軍撤退を敢行。島には「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」の4頭の軍用犬だけが残された。そしてそれはイヌによる新しい歴史の始まりだった――。
2002年『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞と日本SF大賞を受賞、読書界を震撼させた古川日出男。本作は「イヌと現代史」を融合させた壮大な野心作。さまざまな戦場で、宇宙で、「世界」で、「イヌ」たちはどのようにサヴァイヴし、ヒトと関わったのか?感性の極限で描かれた力作。
Book.pngおすすめコメント

軍用犬の歴史で書き切った戦後史!日本の若手小説家の方の中に、このような題材を扱う稀有で面白い作家さんがいることに驚きです。
第二次世界大戦末期、キスカ島に残された日本の軍用犬3頭とアメリカの軍用犬1頭。同時に描かれるロシアマフィアとチェチェンマフィアとの抗争。犬たちは人間の都合で世界中にばらまかれ、彼らの血が広まっていきます。
人間特有のエゴ・エゴ・エゴ。それに巻き込まれながらも、肉を食らい交尾をし、綿々と繋がっていく犬の系譜。「生」に執着することの愚かさと力強さ。2つの章が重なり合ってゆくさまは、胸がざわざわし、思わず感嘆の声が・・・私は漏れてしまいました!
冷えた空気の中に、熱い血潮を感じられる一冊です!

夜の樹

カポーティ/著 川本三郎/訳 新潮文庫 580円(税込)

夜の樹.jpgニューヨークのマンションで、ありふれた毎日を送る未亡人は、静かに雪の降りしきる夜、〈ミリアム〉と名乗る美しい少女と出会った…。ふとしたことから全てを失ってゆく都市生活者の孤独を捉えた「ミリアム」。旅行中に奇妙な夫婦と知り合った女子大生の不安を描く「夜の樹」。
夢と現実のあわいに漂いながら、心の核を鮮かに抉り出す、お洒落で哀しいショート・ストーリー9編。
Book.pngおすすめコメント

静かな、毎日変わらず続く生活の中で、ふと自分の輪郭が曖昧になる瞬間を感じるときがある。孤独は人の精神の均衡を奪ってゆく。そんなとき、ひたひたと〈彼女〉が忍び寄って来てこう言うのだ。                           ーー「ハロー。」                               「ティファニーで朝食を」の華々しく明るいイメージのカポーティのもうひとつの素顔。寒い夜に感じる孤独と淡い恐怖はまた、格別です。








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新解さんの謎

赤瀬川原平/著 文芸春秋 1,631円 
/文庫 540円(共に税込)

新解さんの謎.jpg「赤瀬川さんが興味を惹かれていく対象物には、ひとつのキーワードがあるような気がするんだよね。世の中の外にこぼれちゃったようなもの、現実の外側に行っちゃったもの、しかも激しく向こうへ落ち込んで世の中から消え去る寸前、現実の視線の外にはみ出す寸前のぎりぎりのところにいる何か、みたいなものに惹かれていく(笑)」ーフリーライター・岡野宏文さんのコメントより
辞書の中から立ち現れた謎の男。「新解さん」とは、はたして何者か?
三省堂「新明解国語辞典」の不思議な世界に踏み込んで、抱腹絶倒。でもちょっと真面目な言葉のジャングル探検記。
Book.pngおすすめコメント

むかし、初めて買ってもらった真新しい辞書を手に、今思うと恥ずかしくなるような言葉から積極的に調べていたことを思い出しました。皆さんも覚えがあるのでは・・・?  (と言って逃げます(笑))                               この「新明解国語辞典」、略して‘新解さん’で同じことを調べ始めると、なんだか核心にぐぐっと迫りすぎて感情丸出し、というかとにかく例文がハンパねぇ~!面白い(笑) また文庫版では「紙がみの消息」と題した、赤瀬川さん独特の考察エッセイも収録。寒~い夜に、新しい観点を発見できる本書などいかがでしょうか(*^_^*)

岳 みんなの山 1~8巻

石塚真一/著 小学館ビッグコミックス 各550円(税込)

岳 1.gif秋の北穂高岳。登山中の中年男性・黒岩が、雪に足をとられて崖から転落、腕を骨折して動けなくなってしまった。山麓の警察署では下山時刻が遅れていることから、山岳遭難防止対策協会のボランティア・三歩に救助を要請することに。見かけは頼りなさそうな三歩だが、ヒマラヤや南米の山を歩いてきた経験豊富な救助員で…。
ビッグコミックオリジナル本誌に掲載された読み切りが好評だったため、増刊で連載開始となった石塚氏の出世作。大自然のなかで繰り広げられる感動の山岳救助物語が、ついに単行本化。2008マンガ大賞・堂々の大賞を受賞!
Book.pngおすすめコメント

なぜ命の危険を賭けてまでみんな山を登るのだろう。山といえるような山に登ったことのない私は、冬山の恐ろしさや事故の悲惨な現状にまず驚いた。本書では、山の厳しい掟がいくつも、さらっと登場する。だが、誰よりも山の厳しさを知る主人公・三歩は、山に肉親を奪われた人たちにも、また山に来てほしいと願う。           命の重さや尊さ、人間が一歩一歩自分の足で歩いた時に見える景色。普段思い出すことのないそれらが目の前に迫ってくる、心に沁みる作品です。

つむじ風食堂の夜

吉田篤弘/著 筑摩書房 1,575円 
/文庫 608円(共に税込)

つむじ風食堂の夜.jpg懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さん。
食堂に集う人々が織りなす、懐かしくも清々しい物語。クラフト・エヴィング商會の物語作家による長編小説。
Book.pngおすすめコメント

本書の「余白」は、とてもやさしく清々しい。
余白が清々しい、なんておかしな日本語を使うと怒られてしまいそうですが、ひとつの食堂を中心に語られる人々の在りようが余白を満たし、読者のこころも満たします。
本書は8つの章で成り立っていますが、それぞれの章の「余白」にはそれぞれミュージックが聞こえるかのようです。つむじ風が吹き抜ける風音。無数の傷が刻まれた使い込まれた真っ白な皿にあたる、ナイフとフォークの音。階段を上る音、降りる音。
真冬の寒空の下の、暖かな呼吸音。
貴方が感じるミュージックは、何でしょうか(*^_^*)

てぶくろ ウクライナ民話

エウゲーニー・M・ラチョフ/え うちだりさこ/やく 福音館書店 1,050円(税込)

てぶくろ ウクライナ民話.jpg雪の上に落ちていた手袋にネズミが住みこみました。そこへ、カエルやウサギやキツネが次つぎやってきて、とうとう手袋ははじけそう……。
個性ある動物の表情が特にすばらしい傑作です。


Book.pngおすすめコメント

寒~い冬!といえば、この絵本!!                       ぎゅうぎゅう詰めになっていくことの、なんと幸せなことか(^^) てぶくろの中に押しあい圧しあいになっても、みんないっしょ。動物の描写がすばらしく、毛の一本一本まで鮮明に描かれるリアルさと独特の愛らしさに、子供ならず大人もクギ付けです!                                     お子さんへの読み聞かせにもオススメの一冊です(*^_^*)

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体の贈り物

レベッカ・ブラウン/著 柴田元幸/訳 マガジンハウス 1,680円 /新潮文庫 540円(共に税込)

体の贈り物.jpg食べること、歩くこと、泣けること……重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身の回りを世話している。
死は逃れようもなく、目前に迫る。失われるものと、それと引き換えのようにして残される、かけがえのない十一の贈り物熱い共感と静謐な感動を呼ぶ連作小説。
Book.pngおすすめコメント

==魅力をお伝えするのが難しいので、訳者の柴田元幸さんのあとがき文より引用したいと思います== 
この本は、「とにかく読んでもらわないと魅力がわかってもらえない」本だということだと思う。むろん、つきつめて言えばどんな本だってそうなのだけれど、この本の場合は特に、その魅力を一口で伝えるのが難しい。                  著者R・ブラウンの魅力は、中学英語の範囲に収まるようなシンプルな単語を使って物語を作り出すこと。そしてそのシンプルさで、起きたこと・感じたことを、何の技巧も凝らさず真正面から語る、その語り口にある。                  そのシンプルさは全編「~の贈り物」で統一された題名にも表れている。
何が贈られるかは作品ごとに違うし、世話する側がされる側に何かを与える場合もあれば、その逆もあるし、時にはどちらがどちらに(そもそも何を)与えているのかはっきり言葉にしにくいこともある。だがどんな場合でも、世話される側の『死』へといずれ行きつくほかない‘負けいくさ’のなかで、彼女は確実に何か、「贈り物」と呼べるような肯定的なものを感じとっている。そしてそれを糧(かて)に、物語という贈り物を読者に贈ってくれている、と感じるのだ。                        冬の夜、「生きること」に向き合ってみる時間を過ごしてみませんか。

悩む力

姜尚中/著 集英社新書 714円(税込)

悩む力.jpg情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?
本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。
Book.pngおすすめコメント

雇用の不安定化や格差の問題も本当に身近な最重要課題ですが、何よりその鬱屈が‘暴力’の形で噴出するのがとても恐い。秋葉原の無差別殺人は、そういう意味で最も原因が分かり易く身近に感じられるものでした。
道を指し示してくれるビジネス書や啓発本が売れる昨今において、本書は「答え」を指し示してくれる内容ではありません。著者の姜尚中さんは『人間的な』悩みを『人間的に』悩むことが、生きている証だと説いています。‘暴力’に走る前に、自殺を考える前に、この本を手にとってもらいたい。
私たち各人に寄り添って共に歩んでくれる良書として、本書は今最もお薦めの一冊です。

世界の終わりと夜明け前

浅野いにお/著 小学館ビッグコミックススペシャル 720円(税込)

世界の終りと夜明け前.jpg彼女との別れ話でもめていた友人・飯田に仲介役を頼まれた「俺」。だが、待ち合わせ場所に飯田が現れず、「俺」は飯田の彼女と2人でオールナイトのボーリング場に行く。いっそのこと飲みに誘おうかも考えたが、朝イチの会議までに企画書を完成させないといけない「俺」は、ただ無駄な時間をどうでもいい会話で費やしていく…(夜明け前)。
デビュー連作の短編「素晴らしい世界」、構想6年の渾身作「東京」を含む、心ざわめかす単行本未収録作品10編+α。描き下ろし、カラーも多数収録!!
Book.pngおすすめコメント

どこかひっ込み思案で、感情を表に出さず、あまり接点を持とうとしない。私が感じていた‘現代の若もの’のイメージは、本書でささやかに覆されました。
窮屈な日常の空気の中で、少しずつ死んで行っているような、生きている実感のわかない思いを抱えている若ものにはぜひ読んで欲しい。身近でも見知らぬ人でも、孤独なわたしたちはつながっているのだから。                          登場人物たちは、冬の寒空の下・白い息を弾ませています。