きまぐれレビュー1 of 本の新生堂

きまぐれレビュー 1

RURIKO.jpgRURIKO

林真理子/著 角川書店 1,575円(税込)

ストーリー紹介

昭和19年、満州の帝王・甘粕正彦を四歳の少女が魅了した。「彼女を女優にしてください」。のちに画家・中原淳一に見いだされ、少女は「浅丘ルリ子」としてデビューした。時は昭和30年代、銀幕にひしめく石原裕次郎、小林旭、美空ひばり、燦めくようなスターたち。少女から女性へ、めくるめく恋の日々が始まった。太陽照り映え、花咲きほこる銀幕の裏側、スターたちの舞台は終わらない!自分を生きた女優の半生、一大ロマン小説。

本書を読んで、ルリ子さんの目を通して見た石原裕次郎さんに恋してしまいました…。実の奥様・石原まき子さんに嫉妬心を抱くほどに(笑)
その位、プラトニックではあるけれど切実な女心が書かれています!
ルリ子さんの男前さが以前から好きでしたが、林さんが書く「女」のエゴがひしひしと伝わってきて、ルリ子像も良い意味で塗り替えられてしまいました。
読後、山形県東根にルリ子さんご本人がいらしたので飛んで行きましたが、ご本人はカラッとしたもので、「当時の恋人関係はホントだけど裕ちゃんとのことは林さんのさじ加減よ」と語っておられましたずいぶんカラッと(笑)そこが益々魅力的!
〈本文が、本の雑誌 2009本屋大賞増刊号に掲載されました(*^_^*)〉

2009,4,13 長女

乳と卵.jpg乳と卵

川上未映子/著 文芸春秋 1,200円(税込)

ストーリー紹介

第138回芥川賞受賞作品。文筆歌手を自称、シンガーソングライターとして活動しながら三年ほど前からブログで日記を発表、小説二作目で栄冠を射止めた。初潮を迎える直前で無言を通す娘と豊胸手術を受けようと上京してきた母親、その妹である「わたし」が三ノ輪のアパートで過ごす三日間の物語。全編大阪弁が炸裂するが、文学的に見れば、樋口一葉ばりの息の長い文体が特徴。三人の登場人物の身体観と哲学的テーマが鮮やかに交錯し、魅惑を放つ。

女がただの出産の容れものである――と言った件の輩よ!この本を読め! その一言につきます(笑)
そんな事を言う私自身もまだ未婚・未出産の立場。現代では、仕事+家庭+子育ての三重の悩みを抱えねばならない「女」の方が、ストレスが大きすぎる!-と個人的に憤っていたのですが、本書の親と子の関係を見ると、そんなのただの理屈にすぎないと思い直しました。
子を産んだ母の、強いこと強いこと。
一度産んだら、なぜ私を産んだのだ?という子の苦渋も引き受けられる強さをいつの間にか持つもの。そんな気にさえさせる小説です。
〈本文が、本の雑誌 2009本屋大賞増刊号に掲載されました(*^_^*)〉

2009,4,13 長女

ファミリーポートレイト.jpgファミリーポートレイト

桜庭一樹/著 講談社 1,785円(税込)

父娘の近親相姦を軸とした直木賞受賞作「私の男」に続く、母娘の物語。

ストーリー紹介

あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。呪いのように。親子、だもの。ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。『赤朽葉家の伝説』『私の男』―集大成となる家族の肖像。
母マコは、産み落とした痛みの代償として娘コマコを束縛し続ける。生きるには苦しすぎる逃亡下の隠遁生活、コマコから貪欲に愛情を絞り取るマコ。
もっと私を愛して・・もっともっと・・ ひとりぼっちの母は娘を押しつぶす。母に愛されたいが為に外部との接触を断ち下卑てゆくコマコ。
やがて母と別れた娘は、18歳にして老人のように生きることを拒み快楽に身を埋める。そんな彼女が再び「家族」に属することになりー

一度頁を開くとずぶずぶと泥に足をとられてしまう、稀有な小説体験。ここしばらく無い位の吸引力でした。
いつものように、本書から普遍性を見出し推薦しようと思ったのですが、足元をすくわれてしまい強烈な推薦文が書けない状態です。
桜庭一樹が支持される所以は、若者が感じている「家族」や「社会」への憤りを物語に反映させつつそれ以上に昇華させたライトノベル時代から培われてきたもの。
ライトノベル(軽い小説)と言われてしまったジャンルから、なんなく飛び越えて自由に羽ばたいてみせる彼女の作品には力があり、それがライトノベルの本当の根っこが持つ魅力を押し上げる結果に。文学へ歩み出た後も「売れる小説」として異質な光を放っているのでしょう。もう若者の文学を軽視することはできない強烈な一例ですか。

母に奪われ続けた娘も生きてゆく、女のしぶとさやしたたかさがみなぎる佳作として
また、これからの文学界を背負ってゆく一人の作家作として、読んでおいて損はない一冊。

2009,4,9 長女

ポトスライムの舟.jpgポトスライムの舟

津村記久子/著 講談社 1,365円(税込)

29歳(女)独身・母と2人暮らし。工場のライン仕事の契約社員である長瀬由紀子は、自分の腕に刺青を入れたいと考えている。
入れる言葉は「今がいちばんの働き盛り」。
冒頭のこのエピソードがとても効いていて、うまい。
ナガセは、労働や時間を金で切り売りするように感じられる現代の窮屈な社会の中で、確かに生きている29歳の女性だ。

ストーリー紹介

お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。ナガセ同様、現代に浮遊する女性が描かれる。利己的な消費活動にしか興味のない夫と別れ、子供を抱えて奔走するりつ子・自分の店を持ち淡々と店をまわしながらも、一人身の自由を満喫するヨシカ・資格を取りながらも大学卒業後スピード結婚し、家庭内のルールが全てになってしまったそよ乃。
30歳女性の心理を見事に描く、第140回芥川賞受賞作。

表題の‘ポトスライム’とは観葉植物。サトイモ科、エピプレナム属。南太平洋ソロモン諸島原産、和名オウゴンカズラ(黄金蔓)。
室内のグリーンインテリアとして最もポピュラーであり、姿が美しい。あまり明るくないところにも耐え強健な植物であるが、食べると紫陽花同様『毒』となる植物でもある。
ありふれているのに実用性のないポトスライムと、ナガセの生きることに対する空虚さが、イメージとなって重なり合ってゆく。
ラストにおける彼女のひとつの選択は芥川賞の選評でも意見を二分していたが、同い年で同時代を生きる私個人にとっては、とても救われるものであった。
ひとりの人間の「生」を切り取るのがフィクションの役割だと思うが、著者の筆力は確かで、主人公たちに寄り添うように安心して読める。
今後も、期待して作品を待ちたい。

2009,2,24 長女

みなさん、さようなら.jpgみなさん、さようなら

久保寺健彦/著 幻冬舎 1,575円(税込)

その時代にこそ輝く本というのは決定的にある。 本に賞味期限があると言いたくはないが、時代を超えても尚愛される名作とは好対照に、それが存在することは否めない。
本書はまさに、陰惨な事件が日々塗り替えられる今の時代にこそしっくりくる輝きを持っていると思う。

ストーリー紹介

芙六小学校を卒業したのは全部で107人。みんな、団地に住んでいた。小学校の卒業式で起きたある事件をきっかけに、団地から出られなくなってしまった渡会悟。それを受け入れた悟は団地で友だちを作り、恋をし、働き、団地の中だけで生きていこうとする。「団地に閉じこもってたら、悟君の友だちは減る一方でしょ。さみしくない、そういうのって?」
月日が経つにつれ一人また一人と同級生は減っていき、最愛の恋人も彼の前を去ろうとしていた。悟が団地を出られる日はやってくるのだろうか―。限られた狭い範囲で生きようとした少年が、孤独と葛藤に苛まれながらも伸びやかに成長する姿を描く、極上のエンターテインメントであり感動の物語。第一回パピルス新人賞受賞作。

奇妙な設定を覆す爽やかさでどんどんページを進めてしまう魅力があり、悟の目線で軽やかに、 時に子供っぽく語られる毎日が後半部分に至る時、過去が明らかになっていく。
人が「再生」を繰り返し生きていくためには、現実とはまた一線を引いたひとりひとりの「物語」が必要なのだと感じさせられた。
本書が進学塾勤務の男性作家によるデビュー作であり、常に子供と向き合う作者が書いたということが心強い。

子供を持つ親世代にはぜひ読んでいただきたい、オススメの一冊。

2008,12,16 長女

裁判長!ここは懲役4年でどうすか.jpg裁判長!ここは懲役4年でどうすか

北尾トロ/著 文春文庫 690円(税込)

いよいよ来月5日より、裁判員制度がスタートする。
一昨日の28日、最高裁は各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書を、全国約295,000人に一括発送。
うち東北6県分は、14,620人!
通知書には、裁判員に来年選ばれる可能性があることや、現段階では裁判所に行く必要がないことを記載。辞退できる理由の有無などを尋ねる調査票のほか、制度を漫画で説明した小冊子なども同封されているという。
こりゃあ人ごとではないぞ!?すぐさま制度について知らなきゃ!
・・・とは言え、実際に身近に迫ってからでないと動かない無精者の私がまず読みましたのはこの本。軽快でわかりやすい(どちらかというと野次馬的興味から始まった企画の)本書を読むと、タイトルのごとく裁判長に気安く判決を提案してみちゃったりしたくなるかも。。危険だ。。(汗)

著者の北尾トロ氏は1958年福岡県生まれ、オンライン古本屋「杉並北尾堂」の店主であり、フリーライターとしても活躍。本書は氏の体験レポートの形で、軽犯罪から死刑判決の下されるものまで様々な裁判の傍聴記である。
一つの裁判をじっくり追いかけるのではなく、実に手当たり次第に追いかける形式で、裁判所に通い詰める間にいわゆる「傍聴マニア」の仲間まで作ってしまう。
毎週2~3回は裁判所通いというマニアの方々は、それこそ1つの事件を追いかけ、その事件に関する情報を克明にメモし、綿密に作り上げたノートまで持ち歩いていたりするのである。マニアと聞くと当初不謹慎なイメージを持っていたが、そこには犠牲者家族への同情以上の気持ちが溢れる場合もあり、感心してしまう。
本書で最も身近に感じたものは、交通裁判。
避けられないスピード事故などは、冗談ではなく明日は我が身の世界。あきらかに運転手側が悪い場合は是も非もないが、タクシー運転手によるやむをえない業務上過失致死の場合など、同僚の方々が傍聴席に詰めかけている時もあるそうで。。
想像するだに、いたたまれない‥

本書では「制度」自体には触れていないので、知識のない私などは幅広く読む必要制を感じますが、詰めかける傍聴人の存在が裁判関係者の闘争魂や仕事への意欲に変化をもたらす側面もあり、裁判所へ足を運ぶきっかけになる一冊です!

2008,11,30 長女

蒼天の拳   1.jpg蒼天の拳 1~19

原哲夫/著 新潮社BUNCH COMICS 各530~540円(税込)

蒼天の拳は年齢を問わず、老若男女全ての方々に読んでいただきたい漫画です。
というのは、主人公である霞拳志郎(かすみけんしろう)の生き様がとても潔く、話が進んでいく中で自分もこうでありたい!と共感できる部分が必ずあるからです。

1930年代の上海を舞台に、北斗神拳の伝承者である拳志郎が、朋友(ぽんよう=親友)の青幇(ちんぱん)と共に、上海を魔都と化した敵対組織・紅華会と戦いを繰り広げていく物語です。

ストーリー紹介

上海を別つ3つの地域、「華界」「フランス祖界」「共同祖界」。各々が行政自治権・治外法権を有する祖界には、60ヶ国以上の民族が雑居し、日々闘争を繰り広げていた。
犯罪が横行する祖界で覇を唱える黒社会の権力者達。中でも忠義を重んじる青幇(ちんぱん)と、残酷非道なる紅華会、2つの秘密結社の利権争いは激烈を極めた。その果てることなき闘争は、多くの欲望と悲しみを生み出してゆく。。
北斗神拳千八百年の歴史上、最も奔放、且つ苛烈と呼ばれた男が今、黒が黒を喰う廃都・上海の地を踏みしめる!(アニメ公式HP解説より)

私が好きになった理由は、その戦いの中で拳志郎が朋友を大切に思い、『愛』と『友情』のために生き、強く、熱くつき進んでいくところです。
時代性を持ったストーリーながら絵も現代風で、私のような女性でも読みやすく男女を問わずオススメです!

2008,11,21 三女

夏目友人帳 1.jpg夏目友人帳 1~6

緑川ゆき/著 花とゆめコミックス 各410円(税込)

ストーリー紹介

妖(あやかし)を目に映すことができたため人間に疎まれた夏目レイコは、その寂しさからか、妖たちに勝負を挑み、隷属させる証として名前を書かせたという。
その契約書の束「友人帳」を手にした孫の夏目貴志もまた、レイコの力を受け継ぎ、人にあらざるものを見ることができた。そして祖母と同じように、周囲から疎まれる存在でもあった。
しかし、唯一の血縁であるレイコの遺したものを大事に想い、レイコの奪った名を妖に返すことを決める。そんな夏目の元にはいつしか様々な妖が集い始め…(アニメ公式HP解説より)

主人公の少年は見えざる者が見えるという非日常が子供の頃からの日常だったことで、周囲や親類からもつまはじきにされ孤独な日常を送っている。
同じように彼のような稀な人間にしか見えない妖たちもまた、人に必要とされたいと願っても叶わない失望感を背負っている。
いわゆる妖怪物は目新しくはない。けれど、人と異型の妖たちの孤独の共鳴と、「友人帳」という祖母の遺した形見から妖たちに名前を返していく行為により主人公も救われていく描写は、著者の筆力も手伝って誠にキレイ。ドタバタもまた楽しからずや。
先月より既にDVD化もスタート、映像も人気上昇中らしいですが、本書では繊細な筆さばきが堪能できオススメです!

現在6巻まで刊行、今後の夏目の成長に期待します。

2008,11,19 長女

ミミズクと夜の王.jpgミミズクと夜の王

紅玉いづき/著 メディアワークス電撃文庫 557円(税込)

近ごろ、ライトノベルの発展が目覚ましい。ラノベから学芸書へ進出した人気作家(乙一、桜庭一樹、有川浩など)の活躍が、更なる追い風を吹かせている。
可愛いキャラクター画の表紙とはうらはらに、その内容は各作品とても濃ゆい。今や各出版社がこぞって公募新人賞を作り、若き才能を手中に収めようと躍起になる程熱を帯びている。
本作は、そんなラノベ「入門書」のひとつとして紹介されており、早速一読。一晩で一気読みしてしまった。

ストーリー紹介

魔物のはびこる夜の森に一人の少女が訪れる。額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖、自らをミミズクと名乗る少女は 美しき魔物の王にその身を差し出す。願いはたった一つだけ、「あたしのこと 食べてくれませんかぁ」。
死にたがりやのミミズクと人間嫌いの夜の王、全ての始まりは美しい月の夜からだった―
(本作掲載文より)

様々な人物が絡み合い話に枝葉が生まれるが、それらは全て主人公2人の添え物でしかない。 終盤でふり返り、2人の触れ合いや会話の魅力が浮き上がってくる。また、夜の王が宮沢賢治の「よだかの星」を想起させる。
賢治のよだかが自ら星になるまで辿った孤独な道筋を夜の王も背負い、誰にも心を開かない様(さま)が硝子のような輝きを持つ。 食べられる為、孤高な王に近づく少女。お互いの殻が氷解していく様子が心地よい。純文学の匂いも含ませた、ジャンルを超えた魅力に満ちている。
ライトノベルへの「扉」として、そして今自分の居場所がないと感じているあなたに、オススメです。
<第13回電撃大賞 大賞受賞>

2008,11,7 長女

発明マニア.jpg発明マニア

米原万里/著 毎日新聞社 2,310円(税込)

■眼力で人を殺す方法
■ブッシュに提案したいビンラディンの捜し方
■金日正にも教えたい背を高く見せる方法
■有料ポルノサイトをタダで見る方法
■臓器移植を支える供給源の発掘
ーあなたなら、これらから何を創造しますか??
最近では一番笑ったブラックな世界情勢本『発明マニア』に、その答えがある。
本書は「サンデー毎日」の’03~’06年の3年間の連載コラムをまとめ、著者の米原万里さん没後’07年に出版された。
上記5つはほんの一例の全119章もの‘世界情勢メッタ斬りコラム’各章に、著者独自の発明品を提案している。日本の欧米崇拝姿勢に怒り、環境問題を憂い、万人を思いながらも時には利己的な発明を続ける彼女の頭の中には、本作掲載の採用品以上に一体どの位アイディアが湧き出していたのだろう。笑える珍品もあるが実現していたら嬉しいものも多く、大いなる可能性を感じさせる。お亡くなりになっているのが、心から残念でならない。。

時には、彼女の発明品以上にセンセーショナルな事実の告発コラムも本誌の特徴だ。
例えば「有料ポルノサイトをタダで見る方法」は、アメリカ・カリフォルニア州地方紙がタネ明かし。
ーーイラク、アフガニスタン従軍中の米軍兵士らが、損傷したイラク人の遺体写真を、ポルノ購入の通貨としているーー
この記事は、フロリダ在住のポルノサイト主宰者が考案した素人対象のサイトで、会員数16万人中3分の1が在外米軍だった故に開始したサービスで、結果的に隠された戦場での事実が浮き彫りになってしまった、という超ブラックな告発に基づく。
あえて目を引く一例を引用したが、こんな好奇心だけを煽るような事実を知ることでも、自分が日常のメディアから得る情報のかたよりに気づかされる。本書の特徴は発明・告発コラム共に、そんな『気づき』が満載だ。詳細はぜひ、あなた自身の目で確かめてもらいたい。

多種多様な読書遍歴と、同時通訳者というキャリアから持ち得た客観性のある視点により紡ぎだされる文章は、どんなマスコミより得る情報量にも勝る。オススメの一冊。

2008,11,7 長女

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