


モダンタイムスMorning NOVELS 講談社
左:挿絵完全収録特別版 2,835円(税込)
右:通常版 1,785円(税込)
「検索から、監視がはじまる。」
「魔王」の50年後の世界を描いた「モダンタイムス」。
『今までこんなにのめり込んで書いたことはなかった。』ーこれは3年前に「魔王」が刊行された時の著者の言葉。
2人の兄弟を主軸に物語は、はじまる。。。
ストーリー
システムエンジニアの渡辺拓海が担当することになった取引先は、こちらからの連絡が許されないクライアント。依頼されたシステム内容は、どうやら出会い系サイトのようだ。
見て見ぬふりも必要だ―という言葉を残して失踪した前担当者の忠告を尻目に、いつしか興味本位と技術者魂からシステム解明に乗り出していく渡辺の身に起こることとはー。
コメント
「小説はな、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ。読んだやつのどこか、だろ。じわっと沁みていくんだよ。人を動かすわけじゃない。ただ、沁みて、溶ける―」
物語中で登場人物・井坂好太郎がつぶやく一言。このことばの様に、伊坂小説は‘たった一人’へ向けて発信されているような感覚を覚える時があります。
小説に人を変える巨大な力はない、それでも文章は読者の中に沁み、何かを残す。。。わたしの中にはたしかに残った想いがあります。あなたは何を想うでしょう・・・?

前作「魔王」もチェック。
講談社 1,300円(税込)/講談社文庫 650円(税込)
ストーリー
未来にあるのは、青空なのか、荒野なのか。世の中の流れに立ち向かおうとした、兄弟の物語――政治家の映るテレビ画面の前で目を充血させ、必死に念を送る兄。山の中で一日中、呼吸だけを感じながら鳥の出現を待つ弟。人々の心をわし掴みにする若き政治家が、日本に選択を迫る時、長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、弟の直観と呼応する。ひたひたと忍び寄る不穏と、青空を見上げる清々しさが共存する、圧倒的エンターテインメント。
コメント
主題がファシズムと憲法改正・・・というと、とても硬い内容に思われますが、ようは自分の頭で考えること。
こたえは読者にゆだねられています。
それでも読後に残るのは、弟・潤也が見上げる青空なのです。


舞台となる仙台の場所が印象的!

「重力ピエロ」
新潮社 1,575円(税込)/
文庫 660円(税込)
ストーリー
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父と美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。
2009年春、映画公開決定!キャストは加瀬亮、岡田将生ほか。
仙台市内の舞台(以下●)…春が落書きを消した後、自ら「エンジン」と題した絵を描く地下道を思わせる場所が、名掛町地下道。名掛町アーケードから徒歩1分。現在は駅北口の通路もでき、その地下を通る道にあたる。
おすすめコメント
「泣ける本」という言葉に少々、反発心を抱きます。本を読んで泣く・とは、自分の生きてきた背景に何かしら触れるものがあり、それが噴き出すからに相違ないのだと。
本書を読んで涙したときその「自分」は存在せず、まっさらな感覚だけが残ります。それでいて力がむくむくと湧いてくる、稀有な小説です。

「アヒルと鴨のコインロッカー」
東京創元社 1,575円(税込)/
文庫 680円(税込)
ストーリー
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。2006年、オール仙台ロケで映画化。キャストは瑛太、濱田岳ほか。
●…留学生・ドルジと彼女の琴美が向かったのは、仙台市八木山動物公園。物語のキーパーソンたちが出会う、大切な場所として描かれる。
おすすめコメント
時間軸を操る名手の著者の手によって進む2つの物語の先に見える結末とは―?
すでに転がりだしている物語に、いつしか巻き込まれていく主人公・椎名。
辿ってきた登場人物たちのつむいだ物語に想いをはせ、読後再び頁をめくりたくなる一冊です。
リアルとフィクションの融和が魅力

「オーデュボンの祈り」
新潮社 1,785円(税込)/
文庫 660円(税込)
ストーリー
コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作。
●…“荻島”は、牡鹿半島のずっと南にきたところにある、と設定されているが、残念ながら存在はしない。作中に出てくる田代島や網地島へは石巻から、江島には女川から定期船が出ている。
おすすめコメント
この作品を世に送り出してくれた新潮ミステリー倶楽部の方々、心からありがとう!(笑)
一見シュールな世界からは想像もつかない読後感は、その後の作品にも共通の爽やかさが感じられます。
読み進めるうちに血が通っていく登場人物たちは、その後色々な小説に再登場。

「終末のフール」
集英社 1,470円(税込)
ストーリー
あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか?
●…仙台北部に位置する「ヒルズタウン」が舞台。高台に公園があり、空が近い印象は、小惑星の事実を身近にさせる設定としてひと役かっています。特定の場所はなし。
おすすめコメント
死に立ち向かわないこと、、、そんなこと、自分にもできるだろうか。
人間は弱い。 …案外強いかも?
読んだ人の数だけ答えがある。あなたは8つの物語に、答えを見つけるでしょうか。

店頭でのフェアの様子です
短編集と見せつつ長編の醍醐味あり

「死神の精度」
文芸春秋 1,500円(税込)/
文庫 550円(税込)
ストーリー
CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。
2008年映画化。キャストは金城武、小西真奈美、富司純子ほか。
●…死神が働く日には、雨が降る。
本書の物語たちに風景を与えるのは、読者自身といえるかもしれません。緑の多い仙台には、雨が似合います。
おすすめコメント
さまざまなテイストの6つの物語―ミステリあり、恋愛小説風あり、ハードボイルドあり・・・
ひとつひとつを味わいながら進み、ラストの「死神対老女」へたどり着いたとき、ある大きな感動が待ち受ける。映画のように情景が浮かびます。
「死」をテーマにした小説に背中を押されるとは、思ってもみませんでした。

「チルドレン」
講談社 1,575円(税込)/
文庫 620円(税込)
ストーリー
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。 2006年、WOWOWでドラマ化。キャストは坂口憲二、大森南朋、小西真奈美ほか。
●…パンクロックに彼なりの定義があり、ギターを演奏していたと語る陣内。その演奏場所と思わしき場所が、クリスロード商店街のアーケードの一本北寄りにある路地。若者に人気の服飾雑貨の路面店などが建ち並び、週末は買い物客でにぎわう。
おすすめコメント
予期せぬできごとをきっかけに陣内に出会った盲目の青年・永瀬は言います―
「歴史に残るような特別さはまるでなかったけど、僕にはこれが、特別な時間なのだ、と分かった。この特別ができるだけ長く続けばいいな、と思う。甘いかな。」
うんうん、わかるわかる!読後、同じように救われた気持ちになっている自分に気づき、ほんわり温かい気分に。。

「モダンタイムス」ではマンガ週刊誌モーニングに活字で挑むなど新たな挑戦も試みる著者は、これまでも若手映画監督やミュージシャンとのコラボなどで新鮮な発想の作品を世に送り出しています。
また、魅力のポイントとして多く聞かれるのが、登場人物や事件などの『作品間リンク』。ある作品の主要な人物が別の話の意外なところで再び登場したり・・・といった、実に心にくい仕掛けが施されています。リンクをつなぐ楽しさも味わってみてはいかがでしょうか(*^_^*)
これからもイチ書店員として、また仙台に住む地元ファンとして静かに応援していきたいと思います!
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(上記特集内の仙台の舞台紹介では、仙台文学館編「仙台、言葉の幸。」定価1,050円を参考にさせていただきました)


